ユーカリ(Eucalyptus camaldulensis)は、酸性土壌で問題となるアルミニウム過剰害に対して強い耐性を持つフトモモ科樹木である。本研究では、ユーカリのアルミニウム耐性機構に寄与していると考えられるアルミニウム無害化物質の構造を解析するとともに、そのアルミニウム耐性における役割を明らかにすることを目的とする。 ユーカリの根から高速液体クロマトグラフィーによってアルミニウム結合物質を分離・精製した。分離された物質がアルミニウム結合能力を持つことを比色法によっても確認した。質量分析の結果から、本物質は、分子量1600程度であると考えられた。金属と結合能力を持つ物質の官能基として、チオール基、リン酸基、カルボキシル基、水酸基などがある。元素分析の結果、硫黄とリンが本物質の構成元素でなかったことから、本物質はチオール基とリン酸基を含まないと考えられる。ユーカリ以外の樹木で本物質の含有量を調べたところ、アルミニウム感受性種のMelaleuca bracteata(フトモモ科)とPopulus nigra(ヤナギ科)の根では、本物質は含有されていないか、含有されていてもユーカリと比べて非常に少なかった。また本物質は、ユーカリの根に含まれているだけでなく、根から放出もされていた。本物質は、根の内側と外側の両方でアルミニウムを無害化し、ユーカリの強いアルミニウム耐性に寄与している可能性がある。
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