ユーカリ(Eucalyptus camaldulensis、フトモモ科)は、強酸性土壌で問題となるアルミニウム過剰害に強い耐性を持つ。ユーカリのアルミニウム耐性機構を解明し、応用することで強酸性土壌における植物の生産性向上に貢献できる。これまでの研究で、ユーカリはアルミニウム結合性の物質を根に含むことを見出している。本研究は、ユーカリの根に含まれるアルミニウム結合物質の構造を決定し、アルミニウム耐性における役割を明らかにすることを目的とする。 アルミニウム結合物質の構造を、核磁気共鳴分光法、質量分析法、円二色性分光法等を用いて、加水分解性タンニンOenothein Bと決定した。本物質は、分子量1568で、グルコース2個にガロイル基とバロネオイル基がそれぞれ2個ずつ結合した大環状構造の二量体エラジタンニンである。また、本物質は、以下のような特性を持つことが明らかになった。1.アルミニウム結合能力を持つフェノール性ヒドロキシ基を多数持ち、高いアルミニウム結合能を持つクエン酸以上の結合能を比色法による評価で示す。2.ユーカリの根には、乾重当たり1%近くと高濃度に含まれている一方、アルミニウム感受性樹木のMelaleuca bracteata(フトモモ科)とPopulus nigra(ヤナギ科)からは検出されない。3.アルミニウム存在下でユーカリを栽培すると、根で含有量が増加する。以上の結果から、本研究で構造を決定した加水分解性タンニンOenothein Bが根でアルミニウムを無害化し、そのことがユーカリの強いアルミニウム耐性に寄与していると考えられた。
|