ササは森林のダイナミクスに逐一対応し群落構造を変化させながら林床で優占していると考えられる。したがって林床の資源の分布構造はどのようなパターンで時間的・空間的に変化し、この不均一な資源分布に応答してササ個体がどのように形態的に変化するかを明らかにする。このため3つの研究項目を同時に行い、それぞれの関係性を分析する。 1)資源量を空間的に多点測定し、この時間変化を明らかにする。21年度は光量多点測定の基となる光量子センサーによる長期測定を複数プロットに各一箇所ずつ置いて継続測定を開始したが、まだ結果は出てきていない。多点測定には全天写真を併用して、光センサーによる光量子の積算値から補正する方法を取る予定である。2)クロナルフラグメントの分布構造と地下茎・稈の動態を明らかにする。十和田の1995年一斉開花地プロットでは21年度に中間的な閉鎖林冠下で全7個体を手掘りによって繋がりを明らかにし、今後も成育できるように埋め戻した。フラグメントの成長基部から最遠部の平均長が約6.9mに達した。これがすなわち更新開始15年間の成長量である。3)林分レベルの個体群の空間分布構造とその動態。一斉開花から32年経過した長野県戸隠には非開花、開花林内、開花ギャップの3プロットが設置されている。2008年までのプロット内の全稈サンプリングによってクローン識別を2010年に行った結果、非開花区では10、開花林内区では119、開花ギャップでは44のクローンが識別された。 今後は2)からクローナルフラグメントの成長動態、3)からはクローンの動態や各クローンの盛衰が明らかになり、どのような個体がサイズ、分布を拡大するかを解析し、最終的には優占するメカニズムが見出される予定である。この結果は林業などの非常に重要な応用的技術に繋がる結果と見込んでいる。
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