アクアポリンは生体膜の水透過性を制御している重要な物質である。しかし、その発見は比較的新しく、樹木の葉の生理生態学的特性におけるアクアポリンの働きについては未解明の点が多い。アクアポリンはタンパク質で発現や消失が短時間で行われ得ることから、環境変化に対する樹木の生理生態的機能の反応において重要な役割を果たしている可能性がある。そこで、樹木の葉内のアクアポリン活性と個葉の通水特性やガス交換特性の季節変化との関連性について明らかにすることを目的として研究を行った。研究にはアカガシ、アラカシ、イチイガシ、ウラジロガシ、及びコナラの成木の陽葉を用いた。アクアポリン活性は、アクアポリンの水分子透過を阻害する水銀イオンを処理したときの葉の通水性低下の程度から求めた。その結果、5樹種中4樹種で、アクアポリン活性の季節変化と光合成速度や気孔コンダクタンスの季節変化には連動性があり、葉のガス交換が盛んな時期にアクアポリン活性が高いことが明らかになった。また、葉の通水性の季節変化と光合成速度や気孔コンダクタンスの季節変化には正の相関関係があり、アクアポリン活性の増加による葉内のシンプラストの通水性の増加がこの関係に重要な役割を果たしていることが明らかとなった。こうした結果は、樹木の二酸化炭素吸収能力の季節変化メカニズムの解明において、新しい知見となる。
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