研究課題/領域番号 |
21780161
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研究機関 | 独立行政法人森林総合研究所 |
研究代表者 |
原山 尚徳 独立行政法人森林総合研究所, 北海道支所, 主任研究員 (60353819)
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キーワード | 葉の通水コンダクタンス / 気孔コンダクタンス / 陽葉 / 陰葉 / アクアポリン / 水チャネル / 塩化水銀(II) |
研究概要 |
本研究では、生体膜の水透過性を制御する膜タンパク質であるアクアポリンが、環境変化に対する樹木の生理生態機能の反応においてどのような役割を果たしているかを明らかにすることを目的としている。これまでの研究から、陽葉のほうが陰葉よりも葉の通水性の光感受性が高く、蒸散要求の高い環境に適応した特性を持つことが明らかになり、それにはアクアポリン活性の違いが寄与している可能性が示唆された。そこで当年度は、アクアポリンの水チャネル機能を阻害する塩化水銀(II)溶液を用いて、アクアポリン活性が陽葉と陰葉における通水性の光感受性の差を決めているかどうかを検証した。葉を暗から明条件へ移行させると、通水性は陽葉では数十分で大きく増加したのに対して、陰葉ではほとんど変化しなかった。一方、アクアポリンの水チャネル機能を阻害すると、強光を照射しても陽葉の通水性は増加しなかった。強光下で葉に塩化水銀(II)溶液処理を行うと、陽葉では葉の通水コンダクタンスが16%低下したのに対して、陰葉では10%低下した。同じ葉の通水性で比較すると、陽葉のほうが陰葉よりも気孔コンダクタンスが高い傾向にあったが、塩化水銀(II)溶液処理を施すとその傾向はなくなった。これらの結果から、葉の通水性の光感受性にはアクアポリン活性が関与しており、陽葉の方が陰葉よりも光感受性が高いのは陽葉でアクアポリン活性が高いためであることが実証された。また、アクアポリン活性が高い特性により、陽葉は強光条件下でも葉の水分状態を良好に保ちつつ気孔を開けて光合成を行う能力を持つと考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年4月の人事異動による転勤に伴い実験計画を変更したが、研究対象樹種を変更するなどの対応により、ここまで研究目的の達成に向け順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
冷温帯樹種のポット苗を用いて、土壌乾燥と高CO2環境がアクアポリン活性を通じて葉の通水性や気孔コンダクタンスに及ぼす影響を明らかにする。最終年度のため、これまで得られた成果を取りまとめ論文発表する。
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