日本には、グロマリンをつくるアーバスキュラー菌根菌と共生する造林樹種が広く分布するため、日本の森林ではグロマリン蓄積が炭素貯留能を底上げしている可能性がある。しかしグロマリンの存在量やそれを左右する環境条件についての知見は皆無に等しい。グロマリンの土壌中で金属成分と結びついてそれ自身の難分解性をより強固なものにしていると信じられているため、鉄をはじめどのような金属と関係が深いかを調査した。調査は、京都府木津川市山城試験地のソヨゴ林とコナラ林で行った。前者はアーバスキュラー菌根菌と共生する樹種であるため、土壌のグロマリン含量が高く、後者は基共生樹種ではないため、土壌のグロマリン含量が低いと推察され、実際、グロマリン量に相当するといわれる「特定試薬に反応するたんぱく質含量(BRSP含量)」はソヨゴ林土壌のほうがコナラ林土壌より高かった。このBRSP含量と、ピロリン酸抽出鉄と有意な相関が認められたが、アルミニウム、マンガン、シリカとは有意な相関がなかった。この結果は、「アルミニウム腐植複合体」に代表されるように、腐植物質との親和性はアルミニウムのほうが鉄より強いと考えられるが、グロマリンに関しては鉄によって保持されていることを示している。
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