| 研究概要 |
木材腐朽性真菌類による腐朽は,木材の利用上,最も注意を必要とする劣化の一つであり,腐朽初期にその兆候を発見する技術を開発することが極めて重要である。本研究課題は木材腐朽メカニズムを明らかにするため,以下の3つの解析を行うものである。
(1) 腐朽材菌をDNAレベルで簡便に検出,同定する技術を開発する
(2) 実際の木造家屋を試料として,各腐朽部位に存在する腐朽菌の検出,同定を行う
(3) 各腐朽部位に対して,FISH法に基づく顕微鏡観察および電子顕微鏡観察を行う
本年度は,上記3つのアプローチのうち,変性剤濃度勾配ゲル電気泳動(DGGE)法を用いた腐朽菌の検出技術の開発および本手法を用いた実際の試料の観察を試みた。各種糸状菌から抽出したゲノムDNAを鋳型にして,リボソームDNA介在配列であるInternal Transcribed Spacerに作製したプライマー対を用いたPCRを行い,その増幅産物をDGGE解析したところ,各種糸状菌ごとに異なる移動度を呈したことから,本技術を用いることで,各菌のリボソームDNA断片を分離可能であることが示唆された。また,実際の腐朽材からDNAを抽出し,それを鋳型にして,上述のようにPCR-DGGE解析を行った結果,多数のバンドが観察された。また,それらのバンドをゲルから切り出し,シークエンス解析に供した結果,腐朽在中には多様な糸状菌類が存在していることが明らかとなった。
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