本課題を遂行する上で、ウエスタンブロッティング法(WB)によるセルロース合成酵素の評価法の確立は不可欠な工程である。昨年度、抗セルロース合成酵素ウサギ血清をアフィニティ精製することにより、ブロット膜上のおよそ700~1000kDaの範囲に2本のバンドが認められるようになっていたが、ホヤのバッチにより1本から3本に変動することの原因が判らず、問題となっていた。本年は、ホヤ胚のアセトンパウダーを用いた2次抗体の吸着作業、および2次抗体と検出試薬の組み合わせを30パターン以上試すことにより、WBの詳細な条件検討を行った。その結果、飛びぬけてバックグラウンドが低く、上述の2本のバンドに加え、最も明瞭なバンドが170kDaに認められる条件を明らかにした。170kDaはセルロース合成酵素の計算上の分子量に合致していることから、このバンドは単量体に相当しており、また、上述のバンド数の変動は4量体から6量体を検出していた可能性が高いことが判明した。このように、細胞膜上において複合体を形成するセルロース合成酵素を明瞭に評価する系を確立したことは、本課題の遂行に不可欠かつ重要な成果である。次いで、この評価系を用いて、細胞破砕効率の再検討を行った結果、現行のフレンチプレス法と同等の抽出が超音波破砕法により可能であることが判明した。このことは、より簡便に安価に作業を進められることを意味する。以上の成果に基づいて、細胞破砕液から超遠心法により調製した膜画分におけるセルロース合成酵素の局在を確認しており、現在はその可溶化条件の詳細な検討を行っているところである。
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