樹木タンニン類は酸化の過程において反応性が高まり、様々な物質と化学反応を起こすことが示唆されており、本反応は樹木タンニン類の有する様々な特性や機能に関係していると考えられる。本研究は、酸化がタンニンの特性や機能に関わる"鍵となる反応"であると位置づけ、樹木タンニン類の酸化が関与する反応特性を明らかにすること、具体的にはタンニンの酸素酸化による変性と、それに引き続いて起こるアミン類等の求核試薬との反応特性の解明を目的とする。 タンニンの芳香核モデルとして多価フェノール類を用い、求核試薬であるn-プロピルアミン(PrAm)との反応挙動について検討を行った。空気雰囲気下のPrAm水溶液による反応により、カテコールおよびプロトカテク酸では出発物質が90%程度に、ピロガロール、ガリック酸では20%以下に減少し、反応生成物が確認された。本反応は何れの化合物においても窒素雰囲気下ではほとんど進行せず、酸素雰囲気下では促進されたことから、酸素の関与が確認された。また、レゾルシノールは何れの条件でもほとんど反応せず、フロログルシノールでは酸素の有無に関わらずPrAmとの反応が確認された。空気雰囲気下のPrAm反応による生成物を検討した結果、ピロガロールから2位プロピルアミノ化物、3位プロピルアミノ化物を、ガリック酸から3位プロピルアミノ化物、4位プロピルアミノ化物、4位アミノ化物を、フロログルシノールから5位プロピルアミノ化物をそれぞれ単離同定した。以上の結果から、ピロガロール核有するピロガロール、ガリック酸は、PrAmと酸化を経由したアミノ化反応を起こすことが示された。また、本アミノ化反応はメタノール等の有機溶媒中で生成物の選択性が高くなることから、反応条件により位置選択性が変化することが示唆された。一方、フロログルシノールは酸素酸化とは無関係にアミノ化反応を起こすことが示された。
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