研究概要 |
電気容量式荷重計を試作した。本荷重測定系では,2枚の電極板を4本の金属製のコイル状のばねで支持し,電極板に設置した荷重の増減でばねが伸縮し,その結果変化する電極間距離を電気容量によって検出する方式を採用している。すなわち,電気容量が電極間距離に反比例することおよびばねのフックの法則から,電極に設置した試験体の重量が減少すると電極間距離が増大し,それに伴い電気容量が減少することを利用している。実験においては,2枚のステンレス板が互いに導通しないようにするため,ステンレス板をテフロン製ベースに留めることによって作製した電極部を2枚用い,上側の電極用ベースを下側の電極用ベースに立てたばねで支持し,電極間に交流電圧をかけて電気容量を測定した。まず,荷重計に試験体を設置することなく,室温から木材の高温乾燥に用いられる温度よりも高い150℃における電気容量の周波数依存性を検討した。その結果30kHz-100kHzの範囲で電気容量が周波数にあまり依存しないことが分かった。また,この周波数帯では電気容量の温度依存性も小さかった。そこで,含水率約85%のスプルース生材をこの荷重計上に設置し,交流周波数として50kHzを用い,温度120℃で乾燥処理を行い電気容量の経時変化を測定した。その結果,乾燥による試験体重量の減少に伴い電気容量が減少した。さらに,乾燥初期の乾燥器の温度が上昇している過程においては,従来の歪みゲージ式荷重計では歪みの温度ドリフトが存在したのに対し,本荷重計では電気容量の変化があまり観察されなかった。以上より,適切な周波数帯の交流を印加して電気容量を検出する方式の荷重計が高温条件の木材の重量変化を精度良く測定するために有効であることが推察された。
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