伝統的木造住宅の耐震性能はこれまでに多くの研究によって検討されているが、多数の組物による応力の伝達機構や、大変形域で破壊過程の複雑さがあり、未だ明らかになっていないことが多い。また近年の地震による被害例が多いのも確かで、その構造性能の工学的評価は十分に検討されていないのが現状である。本研究では、研究代表者が開発した倒壊解析プログラムに、伝統的構法特有の耐力発現機構、破壊過程のモデル化を新たに加えることで、伝統的木造住宅の大変形挙動を含めた耐震性評価手法の開発を行うものである。平成21年度の成果を以下に示す。(1)伝統的構法特有の耐力発現機構、破壊過程を考慮した解析プログラムの開発:鋼構造の柱のモデル化で用いられている履歴則の導入、免震建物の計算で用いられている滑り支承等の要素の導入を行い、解析プログラムの改良を行った。解析結果は視覚的に確認できるようにインターフェースの改良を行った。(2)接合部、部材の強度実験データ収集:伝統構法で用いられている鼻栓、込み栓接合部の実験データを入手した。スギの曲げ強さに関する実験データを入手した。(3)建物全体の地震時応答シミュレーションの実施、震動台実験との比較:3次元大型震動台(防災科学技術研究所E-ディフェンス)で行われた実大の伝統的木造住宅の震動台実験結果(平成20年11月~12月に実施)と、本研究で開発した応答計算プログラムの同条件解析結果との比較によって精度の検証を行うた。柱脚の浮き上がりを含め、応答を再現できることが分かった。
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