本研究は、フジツボキプリス幼生の付着阻害活性発現メカニズムを解明することによって、フジツボ類の付着による被害防除へ知見を応用することを目標としている。当該年度は、付着阻害活性を有するイソニトリル化合物の標的タンパク質を解明することを目的とした検討として、光反応性補助基の導入されたイソニシアノ基を有する蛍光プローブの創製と、イソシアノ基を有するアフィニティプローブの作成、およびアフィニティプローブに特異的に作用するタンパク質の解析を行った。 上記蛍光プローブとしては、ベンゼン環を介して、蛍光基(ダンシル基など)、光反応性補助基(アジド)、およびイソシアノ基の3種類の部分構造を有するプローブの創製を行った。その結果、プローブの合成自体は行えたが、フジツボキプリス幼生に特異的に作用するプローブは得られなかった。 イソニトリル基を有するアフィニティ-プローブとしては、セファロースビーズ上に、アミド結合を介して三級アルキルイソシアノ基を有するプローブを作成した。そして、作成したアフィニティプローブに特異的に作用するタンパク質を調べるために、多くの既知のタンパク質情報がある人赤血球ライセートを用いて、イソシアノ基含有プローブに特異的に作用するタンパク質の解析を行った。その結果、電気泳動(SDS-PAGE)の解析から55kDa付近に、イソシアノ基含有プローブのみに特異的に親和した2本のバンドが検出された。 以上の結果から、フジツボ類に対してもイソニトリル化合物が特異的に親和するタンパク質が存在する可能性が示唆された。
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