フジツボキプリス幼生の付着阻害活性発現メカニズム解明を目的として、付着阻害活性を有する化合物のキプリス幼生に対する標的タンパク質を解明すること、および付着阻害物質作用時におけるキプリス幼生のプロテオーム解析を目的とした検討を行った。 付着阻害活性を有する化合物の標的タンパク質の解明については、これまでに付着阻害活性発現に重要であることが示唆されているイソシアノ基を有するアフィニティプローブを作成した後、フジツボキプリス幼生を粗抽出液を用いたプルダウンアッセイにより行った。その結果、電気泳動解析により、分子量53KDaにプローブに特異的に作用するタンパク質が存在することが観察された。これは、昨年度の人赤血球ライセートを用いた解析結果と類似した結果となった。なお、このタンパク質については、データベースによる解析結果では、cytochrome P450である可能性が示唆されたが、詳細な構造は現在解析中である。 また、付着阻害物質作用時におけるキプリス幼生のプロテオーム解析を目的とした検討については、これまでに高い付着阻害活性を示したイソニトリル化合物を用いて、付着阻害物質作用前と作用後におけるフジツボキプリス幼生内の二次元電気泳動解析を行った。しかしながら、発現タンパク質について、明確な解析を行えるまでには至らなかった。 今後、本研究の結果を基にして、同様のアフィニティプローブを用いた作用タンパク質の解析と、詳細な二次元泳動解析を行うことによって、フジツボキプリス幼生の付着阻害活性発現メカニズムが解明されることが期待される。
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