研究概要 |
バラスト水とは、大型船の空荷時に、舶船体安定のために積載される水の事である。寄港地の水を吸入しそのまま用いるため、多種多様な生物の越境移動の原因として問題視されている。そのため,International Maritime Organization(国際海事機関:IMO)では,「船舶のバラスト水および沈殿物の規制および管理のための国際条約」を,2004年に採択している。しかしながら,バラスト処理技術開発の難航が原因の一つとなり,この条約の発効のめどは未だたっていない。本研究においては、低コストで環境負荷が少ない新たなバラスト処理技術の開発を目的として,貝殻由来成分を用いた凝集沈殿法による有毒・有害生物の除去の有用性を検証した。本年度においては、貝殻由来成分から生成した凝集沈澱剤による、海水中のプランクトンの除去の可能性を検証した。まず、緑藻Pavlovasp.培養液100ml(細胞密度10^3cells/ml)に対して、凝集沈澱剤を1-10gの範囲で添加した結果、7g添加においてほぼすべての細胞を凝集沈澱させる事ができた。しかしながら、同条件にて、多種多様なプランクトンが混在する海水に凝集沈澱剤を供した結果、初期細胞数に対して、10%程度の細胞の凝集沈澱が困難であった。とりわけ動物プランクトンに対する効果が低かった。そこで、海水のpH調整剤となるハイドロセパレーターを100μlしたところ、凝集沈澱剤添加1,3,5,7gすべての実験区において、完全なプランクトン除去が可能であった。以上の結果から、凝集沈澱剤に加えて、適時ハイドロセパレーターを添加する事により、プランクトン除去を高効率で行える事が明らかとなった。今後、バクテリアやウィルスを含めた他の生物への適用を明らかにし、船舶への搭載への可能性を検討する予定である。
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