1.(海草藻場)沖縄県西表島網取湾において、海草藻場の消失が魚類に与える影響を明らかにした。2009年の8月に海草藻場が消失した場所に1m×20mのベルトトランセクトを7本設定し、目視観察でトランセクト内に出現した各魚種の個体数と体長を記録した。そして、海草藻場が消失する前の2000年と2001年と2005年の8月の魚類群集と比較した。その結果、海草藻場が消失すると藻場を稚魚の成育場として利用するフエフキダイ類や餌場として利用するヒメジ類など多くの種の個体数が有意に減少したことが明らかになった。また、海草を摂食するブダイ類やアイゴ類も海草の消失に伴って姿を消した。一方で、海草藻場の消失はタカノハハゼなどの底生性ハゼ類の個体数にはあまり影響を及ぼさなかった。以上の結果から、海草藻場魚類の大部分は海草が消失した場所には生活することができないと考えられた。また水産有用種であるフエフキダイ類の稚魚の姿が他の生息場所でも認められなかったことから、海草藻場の消失は沿岸漁業にも負の影響を及ぼすことが示唆された。 2.(サンゴ礁)生存サンゴ域と死滅サンゴ域に着底する魚種を2009年8月と10月にそれぞれ調べた。その結果、生存サンゴ域に主に着底する魚種(例えば、ネッタイスズメダイ)と、生存サンゴ域と死滅サンゴ域の両方に着底する魚種(例えば、ルリスズメダイ)がいることが確認された。したがって、サンゴ礁の劣化は魚類の着底パターンに影響を及ぼすことが示唆された。
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