研究概要 |
1.生存サンゴ域と死滅サンゴ域の成魚と稚魚の生息密度を2地域で調べた。その結果,20m^2あたりの稚魚の種数と個体数は,生存サンゴ域では平均して14種90個体であったのに対して,死滅サンゴ域では5.7種16個体であった。また,成魚の種数と個体数についてみてみると,生存サンゴ域では7種12個体であったのに対して,死滅サンゴ域では1.8種2個体であった。したがって,両生息場における成魚の資源量の違いは,稚魚期に大きく決定しているものと考えられた。 2.生存サンゴ域と死滅サンゴ域における稚魚の加入パターンと,加入後の稚魚の生残などを野外実験で調べた。サンゴ礁内に生存サンゴパッチと死滅サンゴパッチを設置して,稚魚の加入パターンを2ヶ月間継続してみたところ,着底稚魚は生存サンゴパッチのみで確認された。また,着底後の被食率を操作実験によって生存サンゴパッチと死滅サンゴパッチで調べたところ,どの種も前者での生残が高かった。また,生残の割合は,底生雑食魚よりもプランクトン食魚の方が高かった。したがって、多くのサンゴ礁魚類は,着底する際に,着底後の生残率が高い生存サンゴ域を選んでいるものと考えられた。 3.生存サンゴ域と死滅サンゴ域の海水に対する仔魚の反応を水槽実験で調べたところ,多くの種が前者に対して正の反応を示した。したがって,サンゴ礁に来遊する仔魚は,着底前に生存サンゴ域と死滅サンゴ域の水質を認識して,加入してきているものと考えられた。
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