本研究では干潟の生態系機能が水質浄化機能と底性微細藻類を介した隣接海域への有機物供給機能で季節変化するという仮説を検証するため、有明海湾奥部の軟泥干潟において安定同位体を用いて検証した。その結果、干潟表面の底性藻類を食べる生物が活動しなくなる冬期に干潟底性藻類が浅海域のベントス生産への寄与率は夏期よりも高まり、その寄与は沖合域でも平均60%にも達した。しかし夏期でも底性藻類の寄与率は平均44%で高かった。底魚類への寄与率は季節に限らず70%以上であり、有明海の軟泥干潟は水質浄化よりも有機物供給源として主に機能し、これが本海域の高次生産にも反映されていた。
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