ゲノムデータベースが公開されているモデル生物であるトラフグ(Takifugu rubripes)を3個体ずつ2群に分け、一方をトラフグへの感染能を有するEdwardsiella tardaで、他方をトラフグへの感染報告のないAeromonus salmonicida浸漬処理した。使用した細菌はいずれもホルマリン死菌とし、終濃度10μg/ml、浸漬時間は1時間とした。浸漬処理後、トラフグを別の水槽に移し、24時間静置した後、トラフグより皮膚を採取し、PBSによる抽出液を作製した。なお、コントロールには未処理のトラフグを用い、同様に皮膚抽出液を得た。 これらの抽出液を脱塩処理後、二次元電気泳動に供し、各群間でのスポットパターンを比較した。その結果、A.salmonicida浸漬群とコントロール群の間に顕著な相違は認められなかったものの、興味深いことに、トラフグに感染しうるE.tardaを用いた群では、15kDa、44kDaおよび75kDaのスポットの発現量が増加していた。これらの結果は、トラフグが、自己への感染能の有無に応じて、細菌に対する皮膚での防御機構を制御している可能性を示唆している。また、E.tarda浸漬処理群に共通して認められた発現量が増加する三種類のタンパク質について、スポットを切り出し、N末端アミノ酸配列解析を行ったが、いずれも解読することができなかった。従って、これらのタンパク質が、N末端修飾を受けていることが予想された。
|