・有毒渦鞭毛藻の出現状況と、ピコおよびナノプランクトン群集組成の季節的変化との関係を明らかにするため、岩手県沿岸の大船渡湾において周年にわたる調査を行った。有毒渦鞭毛藻のAlexandrium属は5月下旬から6月下旬の水深10m層付近に多く出現し、同じくDinophysis属は4月-6月には表層付近に多く出現したが、ピークは7月下旬の水深15m層以深に確認された。ピコおよびナノプランクトン群集組成については、春から夏にかけては独立栄養性、夏から秋にかけては従属栄養性のプランクトンが占める割合が増加した。有毒渦鞭毛藻の出現状況と、ピコおよびナノプランクトン群集組成との間には統計的な有意性は見られなかった。 ・秋季から冬季にかけて有毒渦鞭毛藻Alexandrium catenellaの赤潮が発生する岩手県沿岸の大槌湾において、カイアシ類を用いた有毒藻に対する摂餌選択性の実験を行った。当該海域の湾奥部で採水した海水をボトルに入れ、その中に同海域で採集したカイアシ類Acartia omoriiを10~20個体入れて24時間インキュベートし、実験前後の有毒藻細胞数を細胞計数装置Flow CAMを用いて計数することにより、カイアシ類の有毒藻に対する摂餌速度を算出した。実験期間中、現場における有毒藻細胞数は270~1200細胞/mlの範囲で変化した。さらに、カイアシ類1個体当たりの有毒藻に対する摂食速度は0.15~1.58細胞/時の範囲となった。現場における有毒藻細胞数と、カイアシ類の有毒藻に対する摂食速度との間には、極めて高い正の相関関係が認められた。
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