研究概要 |
岩手県大槌湾において、有毒渦鞭毛藻Alexandrium catenellaが増殖する秋季から冬季にかけて、カイアシ類Acartia omoriiの微細プランクトン群集に対する摂餌選択性に関する実験を行った。大槌湾の奥部にて採集した海水を容量120OmLのボトルに入れ、さらにカイアシ類20~30個体を入れた実験区と、現場海水のみの対照区を設定した。これらを現場海域において24時間垂下し、実験前後の各種微細プランクトン細胞数を倒立顕微鏡を用いて計数した。微細プランクトンは、(1)A.catenella(2)中心目珪藻(3)羽状目珪藻(4)A.catenella以外の渦鞭毛藻(5)少毛類繊毛虫(6)微細鞭毛藻(細胞径10μm以下)の6つに分けて計数した。計数した微細プランクトンはいずれも細胞径35μm以下であった。これらの計数結果をもとに、カイアシ類の各種微細プランクトンに対する濾水速度と摂餌速度を算出した。研究期間中の平成23年秋季から冬季にかけては、有毒藻A.catenellaの出現は認められなかった。A.catenellaの餌生物に対する濾水速度は、少毛類繊毛虫に対する値が最も高く(2.1~2.9mL個体^<-1>時^<-1>)次いでA.catenella以外の渦鞭毛藻(0.8~1.5mL個体^<-1>時^<-1>)、中心目珪藻(0.9mL個体-1時 1)、羽状目珪藻(0.3mL個体^<-1>時^<-1>)、微細鞭毛藻類(0,2mL個体^<-1>時^<-1>)の順になった。各微細プランクトンの細胞径と、カイアシ類の濾水速度との間には有意な正の相関が認められた。従って、Acartiaカイアシ類は細胞径35μm以下の微細プランクトンに対しては、より細胞径の大きいプランクトンを好んで摂食することが窺えた。
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