本研究の目的は、複数のホッカイエビ個体群を対象に、漁獲に起因した非適応進化を証明し、資源減少との関係を明確にすることである。本研究は大きく、野外データ解析と飼育観察の2項目から構成されている。本年度の野外データ解析における第一の課題は、過去四半世紀におよぶホッカイエビ個体群の生物情報のデータを整理し、個体群ごとの生活史成分の変化、個体群動態を明らかにすることであった。まず、複数の個体群においてホッカイエビの漁獲データを調べた結果、一部の個体群を除き、漁獲量は減少傾向にあるか、低位安定の状態にあった。データ整理が終了した個体群を対象に年齢ごとの50%性転換確率を推定した結果、性転換サイズが小型化していることが明確になった。これは四半世紀の間に遺伝的に性転換サイズが小型化したことを示唆するものであり、その主たる選択圧としては大サイズ選択的な漁獲の影響が考えられる。さらに、本研究ではそれぞれの個体群の動態も推定するが、そのためのデータの1次整理がほぼ終了した段階にある。飼育観察では、実験室内の均一環境下で各個体群から得られた実験室世代エビの量的形質を比較するが、本年度は、比較対象として最適な4個体群から抱卵メスを採集し、卵から幼生をふ化させた。現在までに目的数の稚エビ飼育に成功しており、次年度にオスとして成熟させるよう飼育を継続する。
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