1.無菌飼育系の構築 産出直前のグッピー雌を用いた無菌魚作出法を確立した。すなわち、親魚を複数の消毒液に浸した後、無菌的に開腹し、得られた仔魚を一定時間抗生物質液に浸漬させた。次に滅菌培養器に移し、滅菌平衡生理食塩水で段階的に淡水に戻しながらγ線滅菌微粒子配合餌料を定期的に与えることにより、卵黄を有している仔魚から数カ月以上の無菌飼育ができることを明らかにした。同法による無菌飼育の成功率は8割以上であり、グッピーと同じ小型の卵胎生魚であるプラティーでも同法により無菌魚作出が可能であることを確認しており、同法は淡水性の小型卵胎生魚全般に利用できるものと考えている。なお同法の無菌性は、複数種類の液体培養法および微生物のユニバーサルプライマーを用いたPCR法により確認した。 2.無菌飼育の影響解析 1.で作出した無菌魚を用いて、無菌飼育が魚体に及ぼす影響について解析を行った。同法で得た仔魚を有菌環境下で飼育したものを対照魚として無菌魚と比較したところ、無菌魚は対照魚に比べ成長が早く、飼育開始2ヶ月後には魚体重換算で2倍近い成長が認められた。しかし、組織学的な観察では、無菌飼育魚に明瞭な特徴は認められず、現在、昨年度得た免疫関連遺伝子を基にした発現比較解析を進めている。
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