オカダンゴムシの造雄腺ホルモン(AGH)前駆体はN末端側からB鎖、Cペプチド、A鎖からなり、Cペプチドが除去されて成熟型となる。本年度は、組換えAGH前駆体をバキュロウイルス・昆虫細胞発現系を用いて発現させた。細胞溶解液をSDS-PAGEで分離し、抗オカダンゴムシAGH抗体を一次抗体に用いたウエスタンブロットを行った結果、17.5kDaと22kDaの位置に2本の免疫陽性のバンドが観察され、17.5kDaのバンドは糖鎖が付加していないもの、22kDaのバンドは糖鎖が付加したものと考えられた。次いで、組換えAGH前駆体を逆相HPLCで精製し、同様にウエスタンブロットに供した。その結果、二つのピーク画分に、共に免疫陽性の2本のバンドが確認された。二つのピークにまたがって免疫陽性の反応が観察されたのは糖鎖のパターンが異なっているためと推測された。 組換えオカダンゴムシAGH前駆体の発現法を参考にして、オニテナガエビの造雄腺ホルモン様分子(IAG)の前駆体をバキュロウイルス・昆虫細胞発現系を用いて発現させた。オニテナガエビのIAGに対する抗体を用いてウエスタンブロットを行った結果、組換えバキュロウイスルを感染させた細胞では免疫陽性のバンドが検出されたが、ウイルスを感染させていない細胞ではバンドは観察されなかった。また、検出された免疫陽性のバンドの位置は、組換えIAG前駆体の予想される分子量よりも大きかった。これらの結果より、期待通りの糖鎖を有する組換えIAG前駆体が発現していると考えられた。
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