研究概要 |
運用漁具の中でも操業過程における漁具挙動の把握が特に困難な駆け廻し式底曳網に対して,数値シミュレーションにより操業中における漁具全体の水中形状の変化および漁具の局所荷重を詳細に把握する手法を構築した.実操業実験により,操業中における航跡や曳綱繰出し長および巻上げ速度等の操業情報と,網口深度や漁船と漁具の直線距離といった漁具挙動の断片情報を測定し,得られた操業情報を元にした数値シミュレーション計算を行い,漁具挙動の実測値との比較検証を行った。その結果,規模の異なる2種類の駆け廻し網を対象とした実験において,計算値は実測値とよく一致し,その妥当性が示された.さらに,左右曳綱に作用する張力およびウィンチの巻上げ速度から操業時の左右ウィンチのエネルギー負荷を,漁具各部の移動量および漁具各部が海底から受ける摩擦力から駆け廻し漁具が海底に及ぼすエネルギーを,それぞれ定量化する手法を構築した.網着底時の曳網距離がほぼ同等であり漁具巻上げ時間の異なる2回の操業試験において,それらの操業情報を元にした計算結果を比較した.その結果,巻上げ所要時間の短い操業ではウィンチの総エネルギー負荷はより高くなる一方で,漁具が海底に及ぼすエネルギーはより低くなることが明らかとなった.
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