研究概要 |
平成22年度は6海岸で海浜植物の種組成調査およびハマエンドウ等の海浜植物5種のDNA解析用標本の採取を実施するとともに、平成21年度から継続実施中の伊勢湾西南海岸における海浜植生の遷移過程に関する調査を実施した。本年度は植生帯に攪乱を与えるほどの高波浪が来襲しなかったことから種組成変化についての分析は次年度調査の結果を待って実施することとした。 DNA解析については、平成21年度に4海岸で採取した海浜植物標本を用いて、予備解析として葉緑体DNAのうち34の領域の塩基配列を決定した。これにより例えばハマエンドウではpsbA-trnHとatpI-atpHの2領域の約1,100bp、コウボウムギでもrpL16の約1,000bpにそれぞれ多型が存在し、日本国内の地域的変異を分析する際のDNAマーカーとして有効であることが確認された。 また、海浜生物の代表の一つとして選定したアカウミガメについて、研究代表者が過去に実施したmtDNA塩基配列および核DNAマイクロサテライト領域についての調査結果を解析し、母系遺伝するmtDNAについては雌個体の母浜回帰性によって砂浜間が遺伝的に隔離されている一方で、核DNAについては雄との交尾を通じて砂浜間の遺伝的交流が保たれていること示唆する結果を得た。新たな産卵場の形成が雌の砂浜選択に依存することを考えれば、mtDNAの結果を重視し、少なくとも吹上浜、屋久島、宮崎は別々の管理単位として保全する必要があると考えられた。 なお、平成21年度に仙台湾南部海岸で実施した網羅的な海浜生物調査の結果の一部を公表した。
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