研究概要 |
近年、九州西岸で分布が拡大している亜熱帯性ホンダワラ類について、分布拡大を可能にした要因を探った。具体的には、在来種と亜熱帯性ホンダワラ類について食害からの回復力を比較するとともに、在来種群落の有無が亜熱帯性ホンダワラ類の分布拡大の必要条件かどうかについて検討した。 1.在来種のノコギリモク群落内に移植したキレバモク(亜熱帯性ホンダワラ)は,ほとんど生長せず葉が脱落したが,ノコギリモク群落外へ移植したキレバモクは全長約18cmまで生長するなど,両地点での生育状態に大きな違いのあることが把握された。また,両地点の光強度を連続的に測定し,それらの差異を把握した。これらの結果から,在来のホンダワラ類群落が衰退しなければ,亜熱帯性ホンダワラが侵入し生育することはできないのではないか,という可能性が示された。 2.温帯性および亜熱帯性ホンダワラ類の13種にについて,培養実験によって付着器から葉や主枝が再生するかどうかを調べ,亜熱帯性ホンダワラ類が高い再生能力を持つ一方で,在来種であるヤナギモクとノコギリモクは全く再生しないことを明らかにした。また,主枝や葉の生育限界温度を超える32.5℃で5,11日間にわたり培養したマメタワラ(本種のみ17日間でも実験)とキレバモクの付着器も,その後水温を20℃に下げて培養すると再生能力を示すことも把握された。温帯性あるいは亜熱帯性のホンダワラ類が示した付着器からの再生能力の違いは,食圧や水温などの厳しい環境下で,生存できるかどうかを左右する重要な要因であることが分かった。
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