本研究は、魚類の自然免疫応答に着目し、魚類病原微生物に対して特異的に発現応答する遺伝子について、その機能を解明することを目的とした。昨年度までに、新規に設計したマイクロアレイを用いて解析した結果、様々な病原微生物に対して特異的に発現応答する遺伝子はみつからなかったものの、グラム陽性菌に比べてグラム陰性菌に対して、様々な遺伝子の遺伝子発現応答が強くみられることを示した。 本年度は、Edwardsiella tardaおよびStreptococcus iniaeの不活化菌体をヒラメ腹腔内に投与した際、インターロイキン1β(IL-1β)およびインターフェロンγ(IFNγ)遺伝子の発現がどのように変化するかを経時的に解析した。菌体成分量をそろえるため、乾燥菌体を調製し等量ずつ投与した場合、これらいずれの遺伝子もE.tarda菌体を投与した個体において、S.iniae菌体を投与した場合よりも強い発現誘導がみられた。また、上述のマイクロアレイでは検出できない遺伝子があることが考えられたため、ヒラメにおいて発現する遺伝子を網羅するため、次世代シークエンサを用いたトランスクリプトーム解析を試みた。 さらに、ウィルスに対する自然免疫応答について解析するため、I型IFN系の応答を誘導することが知られるpolyICおよびラブドウィルスのグリコプロテインをコードするDNAワクチンを投与したマハタを用いて解析した。15℃と25℃で飼育した個体を用いて実験したところ、I型IFN系の応答は25℃では非常に弱く、15℃の場合に強く応答することを明らかとした。
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