1. ウミヤツメゲノムデータより得られた塩基配列を参考にしてプライマーを設計し、カワヤツメのゲノムDNAを鋳型に3種類のミオシン重鎖遺伝子、MYH1、MYH2およびMYHxの上流約5kbをPCR法にて増幅し、GFPもしくはRFPベクターに挿入した。これらベクターをゼブラフイッシュ受精卵に顕微注入し、蛍光タンパク質の発現を観察したところ、MYH1およびMYH2上流域を挿入したコンストラクトはゼブラフィッシュ筋肉における発現がみられたが、MYHxのコンストラクトでは発現がみられなかった。また、蛍光タンパク質の発現が確認されたゼブラフィッシュ胚を固定し、遅筋線維を特異的に認識するモノクローナル抗体を用いて免疫染色を行ったところ、蛍光タンパク質の発現部位は速筋に限定していた。真骨魚類および四足類を含めた硬骨魚類の共通祖先と5.6億年前に分岐したとされる無顎類ヤツメウナギの速筋型ミオシン重鎖遺伝子プロモータが真骨魚類のゼブラフィッシュで正しく認識されていることから、速筋型ミオシン重鎖遺伝子の転写調節機構の一部は両者の共通祖先が分岐する以前に確立されていたことが示唆された。 2. ウミヤツメおよびカワヤツメのゲノム解析により、ヤツメウナギ類はMYH2-MYHx-MYH1の順で同一方向に3種類のミオシン重鎖遺伝子がクラスターを形成していることがわかった。カワヤツメを対象に、各遺伝子のプロモータ領域、すなわちMYH2の上流約8kb、MYH2およびMYHx間の約5kb、MYHxおよびMYH1間の約11kb、およびMYHxの内部配列約12kbの塩基配列をショットガンシークエンス法にて決定した。プロモータ領域をLAGANプログラムを用いて比較したところ、MYH1およびMYH2間にのみ類似する配列がみられたため、同配列がゼブラフィッシュ速筋におけるプロモーター活性に影響していることが示唆された。
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