1. 有明海沿岸で食用とされるイシワケイソギンチャクの食品衛生上の安全性について検討した。その結果、粗抽出液のサワガニに対する毒性は、致死活性が16倍希釈液、麻痺活性が128倍希釈液まで認められたが、ウマ赤血球に対する溶血活性はみられず、またマウスに対する静脈投与、腹腔内投与、経口投与のいずれにおいても毒性は認められなかった。 2. イシワケイソギンチャクから、サイズ排除クロマトグラフィーと逆相HPLCによって、サワガニに致死活性を示すToxin Iを単離し、そのN末端アミノ酸配列を解明した。Toxin Iはそのアミノ酸配列の特徴とTOF-MSでの分子量から、イソギンチャクのタイプ1のNaチャネル毒であると推定された。また各種クロマトグラフィーによる毒成分精製の条件検討から、本研究で単離したToxin I以外に、イシワケイソギンチャクにはまだ単離されていない毒成分があることが示された。 3. 外国産イソギンチャクActinostephanus haecheliから、サイズ排除クロマトグラフィーと逆相HPLCによって、サワガニに強い致死活性を示すAh IおよびIIを単離し、そのN末端アミノ酸配列を解明した。アミノ酸配列の特徴からAh IおよびIIは、タイプ1のNaチャネル毒と判断された。興味深いことに、Ah IおよびIIは、タイプ1のNaチャネル毒の中でも、54残基とペプチド鎖が最も長く、特異的な位置づけにあるウメボシイソギンチャクのAe Iと高い相同性を示した。
|