研究概要 |
本研究は,食品関連企業の不祥事に対する株式市場の反応を分析するものである.2010年度においては,2007年1月に発覚した洋菓子メーカーA社による消費期限切れ原料使用問題に着目して,同業であるB社とC社との間の株価変動における動的相関係数の分析を行った.A社とB社は不祥事発覚以前から業務提携関係にあったが,不祥事の発覚にともない,提携関係を解消している.一方,C社は,不祥事発覚で業績の低迷したA社を子会社化している.このように,食をめぐる不祥事を契機に,提携関係解消と子会社化など,A社と同業他社との関係に変化が生じていることから,株価変動の動的相関係数をDCC-GARCHモデルによって推定することで,不祥事や企業間の関係変化に対する株式市場の反応を明らかにすることができる. 分析の結果,不祥事発覚時には,提携関係にあったA社とB社の動的相関係数がただちに低下するという変化が見られたのに対して,提携関係解消や子会社化発表の際には,大きな変化は認められなかったことが明らかとなった.これは,提携関係解消や子会社化という情報は,不祥事発覚にともなうA社の業績低迷などによって,株価に徐々に反映されており,そのため正式発表に際しては,おおきなインパクトを与えなかったものと考えられる.また,前年度の研究結果と比較しても,このような不祥事に対しては,市場は直ちに反応する傾向にあることが推察される.
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