研究概要 |
本研究の課題は,さまざまな問題を抱える集落コミュニティを対象として,ソーシャル・キャピタルの働きや役割を構造的に整理し,さらにその発現メカニズムを解明することである. 平成21年度までに,集落コミュニティの活性をもたらすソーシャル・キャピタルの役割に関する知見を得た.また,平成22年度には,限界集落における人的繋がりの構造に関する知見を得た.平成23年度には,これらの知見を統合した(図書). 得られた主要な結論は,以下の10点である.すなわち,(1)集落活性や集落機能に対して,信頼感は大きな貢献を持ち,人と人との繋がりはそれほど大きな貢献を持たないこと,(2)共同活動の意欲,リーダーシップ,人間関係の強さ,一体感が集落活性や集落機能に対して貢献がある一方,人間関係の良さと平等意識が大きな効果を持たず,義務感が負の効果を及ぼすこと,(3)信頼感とリーダーシップは集落内感情の下支えとなること,(4)ソーシャル・キャピタルと集落内感情が共同活動の意欲や合意形成機能に結びつくことが貢献のメカニズムの中核であること,(5)人と人との繋がり,人間関係の良さが集落内感情や集落機能に正負両面の効果を及ぼすこと,(6)高齢女性,壮年男性及び若年者の他者と持つ繋がりが限界集落において重要であること,(7)特に,高齢女性と壮年男性における同一階層内での繋がりが顕著であること,(8)親族関係が人的繋がりを活発にすること,(9)限界集落における人的繋がりには,網目状,グループ接続型,放射状の構造が観察できること,(10)構造に応じて,人的繋がりのまとまりと頑健性に大きな差異が見出せることである.
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