本研究の目的は企業農業の地域社会・経済に与える影響を実証的に分析し、それを国際比較することであり、平成21年度の課題は、(1) 日本における事例調査、(2) 参入企業に対するアンケートの実施、および(3) 米国での事例調査、であった。 国内での事例調査については、国内の先行事例に対し、聞き取り調査を行った。それを基礎に、主に植物工場を経営する企業に対し、予備的なアンケート調査を行った。それらから、企業の参入意欲は依然として旺盛であることが確認されたが、その経営成果は、収益面からは必ずしも計画通りの水準を確保できていない実態が確認された。それらの成果は、国際シンポジウム(韓国、タイ)などで報告した。 また米国では、カリフォルニア州で農業経営と地域との直接的な連携が進んでいることが確認された。ファーマーズ・マーケットが伸長していることはこれまでの研究で明らかにしていたが、近年、急速にCSA(Community Supported Agriculture)が増加しており、農業経営の有力な収益源となっていることが確認された。CSAはマーケティング・コストがファーマーズ・マーケットよりも低く、事前の経営計画が立てやすいことから、農業経営にとっては魅力的なマーケティング・チャネルとなりつつある。州法の改正(AB2168)も大きく影響していると考えられ、この影響について今後の調査を進めていく必要があると考えている。これらの成果の一部は国際学会で報告した(ISSAS)。
|