最新の地産地消の事例収集を行うために、全国農業新聞、農業共済新聞から関連記事を分類した。また、他研究者からの情報提供などを元に、今年度は2か所を選定し、ヒアリング手法による研究を実施した。一つは、神戸市垂水区にある垂水商店街の事例である。ここでは、垂水商店街と旧八千代町(現多可町)が連携関係を結び、商店街にアンテナショップを展開している。その成立過程には、役場職員がキーパーソンとなったこと、神戸新聞社が都市と農村とを結ぶパートナーシップ提携の支援をする事業を展開していたこと、垂水商店街は商店街としての機能を元々果たしていたことが明らかとなり、アンテナショップが開店する日には、その前の通りの通行人が増加することなどが明らかとなった。また、もう一つの事例は、宇治田原町立保育所の事例(以下、保育所と記す)である。保育所では、栄養士がキーパーソンになっていること、町民の多くが本保育所に通っており、本保育所は給食費が町の支援金等で潤沢に確保できることが主たる要因であることが明らかとなった。また子どもたちの食育的側面で、保育所に野菜を提供している農家の好意で、園内に野菜を育て、子どもたちの関心を引き付けている。さらに本保育所では、子どもたちの給食メニューレシピの一部を直売所で提供している。直売所と保育所の関係を密にするための取組であるが、アンケート調査より、直売所で本メニューを積極的に得ている人は少ないことが明らかとなった。しかし、子どもたちが、直売所で買い物体験をする取組も実施されており、子どもたちは喜んでいる。子どもたちと地産地消を結び付ける試みは、実現可能であるが、一般消費者にまで影響を及ぼすことは難しいということが明らかとなった。このように今年度は、情報の収集と近畿圏内2か所での調査を実施した。
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