本年度の研究では、国民のライフステージに応じた食育に関する調査を行うのに先立ち、まず、国民への食育に関連する情報伝達の内容の変遷について、新聞記事データベースを用いて明らかにした。 その理由は、2005年の食育基本法制定以降、食育に対する認知度や関心は次第に高まってきた。しかしその際、各種メディアから情報発信する食育関連の内容の偏りによっては、国民に対する食育への理解にも偏りが生じるおそれがある。それと同時に、食育活動としての取り組みも偏ったものになる可能性がある。本研究の最終的な目的であるライフステージ毎の食育を明らかにするためには、現在わが国でどのような食育活動が行われ、また、どのような食育活動が不十分であるかを明らかにする必要がある。 そこで、本研究では、まず、情報量が多く、全国のニュースや話題を網羅していること、国民の目に触れやすいことから新聞記事情報に着目した。その情報数から、わが国の近年の食育に関する情報発信の動向を明らかにするとともに、食育関連の記事内容から、テキストマイニングの手法を用いて、出現するキーワードについて言語処理を行うことで、食育における情報発信として、どのような項目が中心的であるか、また、どのような項目において、食育活動が不十分であるかを明らかにした。 その結果、食育の場としての記事件数は、学校が最も高い構成比(51.2%)を示しており、本来食育活動の中心である家庭については、その閉鎖性からか構成比は21.8%に留まった。また、食育の目的については、栄養や健康が中心的となっており、農業については、構成比も低かった。わが国の食育推進の目的は、食生活改善や栄養改善のみならず、日本農業の活性化や食料自給率向上も重要目的とされていることから考えると、食育活動において農業に関する取り組みの強化が今後の重要課題であるといえる。
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