研究課題/領域番号 |
21780212
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研究機関 | 東京農業大学 |
研究代表者 |
小島 泰友 東京農業大学, 国際食料情報学部, 准教授 (90508235)
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キーワード | 食料危機 / 農産物貿易 / 小麦 / トウモロコシ / 大豆 / 地域経済統合 / 価格高騰 / 食料安全保障 |
研究概要 |
2010年10月、世界の主要食料価格指数が過去最高値の2008年6月の水準に迫った。FAOの報告書には、主要因としてロシアでの干ばつと小麦輸出規制による国際価格の上昇が挙げられた。ただし、その背景として、食料危機後の小麦価格の下落やパーム油・大豆の国際価格高騰が、小麦輸出国の小麦生産量の伸び悩みにつながっている側面もある。 中国・インド・EUのパーム油の輸入増加を背景に2008年の食料危機の直後から、パーム油の国際価格が再び上昇し、それと相まって大豆油の国際価格上昇も見られた。また同国のトウモロコシ収穫面積が急増するなか、大豆の生産量は伸びず、大豆の輸入増加を背景に大豆の国際価格が上昇し、大豆油や大豆飼料の国際価格上昇につながった。 一方、小麦の最大輸出国の米国では、トウモロコシと大豆の国際的な需要増加を背景に2009・10年度にトウモロコシの収穫面積は増加し、大豆の収穫面積も過去最高水準に達した。食料危機後の2009年度、米国国内ではトウモロコシ価格が前年比で9%、大豆価格が5%下落したが、小麦価格は34%も下落した。これを背景に、米国の小麦収穫面積は2009・10年度に減少し(1960年代の水準)生産量は伸び悩んだ。ただし2009年度に世界の期末在庫が十分回復していたため、10年度は07年度ほどには事態は悪化しなかった。 他方、小麦の最大生産地域であるEUでは、小麦域外輸出比率は2000年代平均で約37%あるが、平年作の2009・10年度に40%以上の比率で域外輸出が行われた。しかし、不作の2007年度では小麦の域外輸入及び域内輸出入はともに例年水準であったが、域外輸出比率は28%まで落ち込んた。このように、2007年度の不作時はEU域外への小麦輸出が抑制され、域外輸入を確保しつつ域内貿易が優先的に行われており、一種の地域経済統合がEU加盟国間には有効に機能したと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2007年・2008年の食料危機と比較する上で2010年の価格高騰に関するデータが重要となるが、各国統計の公表の関係で、その入手が進んでいない面がある。
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今後の研究の推進方策 |
2008年の洞爺湖サミットでは食糧備蓄制度の創設が表明されたが、緊急備蓄放出制度の動向について取り掛かれていないため、この点、関係機関から聞き取り調査等を行い、研究を推進していきたい。
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