研究概要 |
1. 分析モデルの検討 農業経済学分野において非補償型選択ルールを持つ消費者の商品購入行動を行動経済学からアプローチした研究はほとんど見られないことから,これらの研究蓄積において先行している行動経済学,交通経済学分野およびマーケティング・リサーチ分野の研究事例を参考としつつ,食品安全性を分析対象とする場合に要する改良点について検討した. 分析モデルの検討に当たっては,具体的に以下の点に留意して実施した.非補償型選択ルールが生じる状況を(1)消費者にとって一般的ではない属性が提示されたことにより,損失回避性に基づく現状維持バイアスが生じている状況,(2)消費者にとって一般的な属性が失われたことにより,損失回避性に基づく現状維持バイアスが生じている状況,(3)1人の選択実験被験者が複数回の選択実験を行う場合に1回前の属性水準が参照点となり選択行動に影響を与える状況に分けて検討した. 2. プレテストの実施 選択実験において,プレテスト(事前の試験的調査)の実施は,質問項目および分析モデルが適切に設定され,実行可能性が確保されているかを検討する上で必須である.具体的には、(1)評価対象財を構成する属性とその水準数を適切に設定しているか,(2)参照点の存在と損失回避性による非補償型選択ルールを持つ消費者を検出する質問が機能しているか,(3)選択ルールに影響を与える要因を捉えるための質問が適切に設定されているか,についてインターネット調査を利用して検討した.
|