研究概要 |
本研究の目的は,従来の選択実験による食品安全性の消費者評価研究においては十分に考慮されていない非補償型選択ルールを持つ消費者の行動について,選択実験の構築を試みることにより,実証的に明らかにし,消費者への食品安全性情報提供のあり方に示唆を与えることにあった.平成23年度では,具体的には,(1)前年度調査データの検討,(2)食品安全性分野以外でのモデル適用可能性の検討を行ったうえで,選択実験を試みた. (1)前年度調査データの検討 平成22年度に実施した洋菓子における地域ブランドに対する消費者評価に関する調査では,価格を参照点とした非補償型選択ルールが示唆される結果となった.そこで,平成23年度では、平成22年度の結果をさらに精査するとともに,参照点となる価格に対して提示価格が高価格な場合と低価格な場合,双方を同時に考慮する分析モデルについて検討を試みた.その結果,選択実験について,基準価格に対する値ごろ感を尋ねる質問など参照点を検出する設問とランダムパラメータロジットモデルを組み合わせることで,個人別のパラメータ推定結果に参照点の影響を考慮することが可能であると考えた. (2)食品安全性分野以外でのモデル適用可能性の検討 本研究で得られた非補償型選択ルールを包摂するモデルは,多くの分野に拡張することが期待される.そこで,本年度は(1)より得られた分析モデルの実証について,食品安全性以外の食品関連属性として低カロリー属性を付与した米を対象とした選択実験を試みた.分析の結果,個人ごとのパラメータ推定から,平成22年度に実施した分析で示唆されたパラメータのバラツキを定量的に把握することができ,分析モデルの有用性を確認することができた.
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