インド農村金融の中心的存在である単位信用農協であるが、融資に対する返済率の低さを主な理由として、経営の悪化に苦しんでいるものが多く存在する。そのような中、インド西部・マハラシュトラ州にある単位信用農協において、他の農協(この場合、製糖協同組合)と連携することにより、返済率を向上させようとする取組みを行う事例が見られる。この事例が、返済率向上のために、単位信用農協にとっての新たなモデルになり得るかどうかを実証することが本研究の目的である。 平成21年度は、単位信用農協との連携を通して、製糖協同組合が果たしている機能を明らかにするための研究活動を行った。その際、特に重視したのは現地調査で、2009年9~10月、2010年2~3月の2度、インド西部マハラシュトラ州のプーネ県、ソラプール県、コラプール県を訪れ、単位信用農協関係者、借入者である組合員、単位信用農協の上位機関(県中央協同組合銀行やインド農協農村開発銀行など)の関係者、製糖協同組合関係者、学識経験者などから聞き取り調査を行った。 その結果、単位信用農協が安全な信用取引をしようとする場合、製糖協同組合が借入者の詳細な情報を提供することで、本来なら単位信用農協が負担しなければならないはずの取引費用軽減の効果を生み出しており、またそれが、融資返済率を高める一要因になっているとことが明らかになった。 なお、本年度の研究成果の一部が「新経済政策下における農協「地域営農センター」の効果-インド・マハラシュトラ州の製糖協同組合の実態調査から-」(『南アジア研究』第21号、pp.7-29)として掲載された。
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