本研究は、農産物や加工食品において、価格や産地名など購買場面で得られる外部情報とともに、特定商品へのロイヤルティといった内部情報が商品選択をどのように規定しているのか、また、それらは品目間でどの程度異なるかを、消費者の購買履歴データを用いて定量的に解明し、併せて、特定商品へのロイヤルティの形成がどのようになされるのかについて、消費者への聞取り調査により解析することを目的とする。 平成21年度は、次の2つの分析を行った。 1. 農産物直売所の顧客ID付きPOSデータを用いて、トマト、きゅうり、米の3品目に関し、特定の生産者の商品を継続的に購入するという生産者へのロイヤルティ行動が実際にどの程度見られるのかを分析した。その結果、きゅうりに比べ、トマトと米で多くのロイヤルティ行動が観察された。このような結果は、トマトについては、生産者間で味のばらつきが大きく、期待外れの商品を選択する確率が高いため、また米については、単価が高く、1回購入した商品を数週間以上食べ続けることになるので、購入した商品が期待外れの品質だった場合の金銭的損失と被る不満足が大きいためもたらされたと考えられる。 2. 農産物直売所の顧客ID付きPOSデータとトマトの生産者別品質データを用いて、農産物購買におけるロイヤルティ形成要因について分析を行った。その結果、コスト・パフォーマンスが優れた生産者ではなく、食味の点で消費者が不満足を感じる商品の出荷割合が少ない生産者ほど、消費者からのロイヤルティを確立していることが明らかになった。
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