農業法人における財務データ(帝国テータバンクより購入。同一経営3ヵ年(2005年~2007年)の財務データが把握できる100社)を用いた財務分析(収益性の4指標、効率性の5指標、財務安全性の8指標、キャッシュフロー指標として売上高キャッシュフロー比率の計18指標を対象)を行った結果、次の3つの知見が得られた。 1. 財務宋全性指標と他の経営指標間における相互関連性 財務安全性と収益性間には強い相関関係はみられなかったが、一方で、流動比率と固定長期適合率といった財務安全性同士の指標間において強い相関が確認できたことから、同一特性指標内における波及効果の存在が示唆された。 2. 財務不良群と良好群の差異 財務不良群と良好群の比較を通して、両群間の財務安全性の相違は、効率性指標がほぼ同程度であることから、収益性の相違によるものと考えることできる。ただし、.この収益性は、本来、経営間並びに年次間の変動が大きい指標であることから、ここでの財務不良が経営体質め脆弱性によるものか、あるいは臨時的な収益性の低下によるものかについては、ケーススタディ等のアプローチによる研究蓄積が必要となっている。 3. 財務悪化の先行指標 財務悪化の過程においては、まず収益性を表す総資本経常利益率や売上高経常利益率、並びに、資金繰りの評価指標である売上高キャッシュフロー比率等が先行的に著しい低下傾向を示し、それとともに効率性を表す諸々の回転率も低下傾向を示す。その上で、短期及び長期の財務安全性の低下が生じることを確認した。
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