研究概要 |
本研究の目的は,霞ヶ浦周辺のハス田を対象として,水質汚濁負荷の削減に向けた営農計画を構築することである.具体的には,耕地ごとの作期および作業の分散による排水量の調整や,排水権の設定による負荷抑制対策の実効性について検討することを主な研究課題に設定し,茨城県霞ヶ浦周辺地区の企業的家族経営農家を事例に,その農作業体系(特に収穫作業に注目)および作業効率を調査した.23年度は前年度の結果である以下について検証・確認を行った.(1)レンコン収穫繁期においては,収穫を行うハス田から出荷準備を行う自宅作業場までの往復の時間が軽視できず,農家は集落近傍のハス田での作業を好むことから,その計画的な分散は困難である.(2)収穫のみならず,レンコンの洗浄にも多量の用水を使っている農家が多数いる.したがって排水量の削減のためには,自宅作業場に洗浄水槽や洗浄機を配置することが望ましく,そのための助成措置を検討する必要がある.(3)収穫したレンコンのうち,出荷できない残渣部分の量は看過できず,多くの農家はそれをハス田に放逐していた. さらに,研究目的とは異なるが,平成23年度は急遽,震災に対応してのレンコンの風評被害に関する調査を行った.その結果,IA経由で販売されているレンコンについては,震災直後の4~6月こそは売り上げの減少が見られたものの,それ以降は特に影響は見られなかったとのことである.その一方で,直売農家は大幅な売れ行きの減少があったとのこと.その理由について,贈答品の減少,すなわち,消費者本人は,放射能汚染の影響のなさを把握しているものの,そうした消費者が他の消費者への贈答品などとして使用することについては,「うちはいいけど,あそこのうちは嫌うかもしれないから」という,一歩踏み込んだ配慮によって,使用を自粛するという意向が働いたのではないかと考察した.
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