研究概要 |
本研究では,地域特性に立脚したグリーン・ツーリズム(以下,GTと略)の推進形態を検討する基礎として,物理的条件(農業資源・地理的資源),心理的条件(参加意識・利用意向),社会的条件(法制度・土地利用計画)の観点から環境ストックの供給ポテンシャルとGTの活動パターンを明らかにし,耕作放棄地等の潜在的な環境ストックを高度に活用したGT活動の実践可能性を評価することを目的としている。 プロジェクト2年目となる平成22年度は,プロジェクト1年目に把握した事例地区の物理的条件に基づいて,(1)GTに掛かる費用や時間等を考慮したプログラムを試作するとともに,耕作放棄地の活用方策の一環として(2)市民農園の需給率の規定要因を明らかにした。具体的に(1)は,既に構築済みの環境ストックのデータベースに,訪問者の移動方法や宿泊の有無によって分類した9つのGTパターンを照合し,モデル地区で実践可能なGTパターンを判定した。またGISのネットワーク解析を用いて,GT活動に掛かるコストと時間を変数としたシミュレーションを行い,日帰り型のGTプログラムを計85個作成した。これによりモデル地区の供給ポテンシャルに即した,具体的なGTプログラムを明らかにすることができた。また(2)については,市民農園の利用状況(利用者数,空き区画)を評価するために「需給率」という指標を設定した。現地調査ならびに文献調査に基づいて,73箇所の市民農園における需給率と農園周辺の特徴(利用料金,開設後の経過年数,市街化区域や農地面積などの地理的属性)を明らかにした。農園周辺の特徴を説明変数として重回帰分析を行った結果,開設後の経過年数が市民農園の需給率を規定する要因として有為な相関を示した。このことから,利用者数が区画数に見合う数まで到達するには,一定の年数が必要であることが示唆された。
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