平成21年度は、ラオスのKM6灌漑地区において、雨期米の収穫時期である10月に調査を行い、地区内の稲の生育状況を実際に刈り取り調査と携帯型分光放射計によるスペクトル観測から得られるNDVI値により評価した。雨期は、天水のみで栽培するため、生育状況は水田の土壌条件および地形的な立地条件により変化することを確認した。乾期作の2月調査においては、灌漑用水の分配状況を詳細に観測し、各地区での水の使用状況と生育状況(スペクトルにより評価)について比較を行った。その結果、灌漑による水の供給量との相関は上流域では高く、下流域では低い結果を得た。地下水位観測の結果を鑑みても、下流域では地下水経由での水の供給が作物生長に利用されているためと考えられる。また、稲の気温・水温に対する応答に関しては国内において調査を行った。水田内にて水深、水温の分布および気象データを計測し、稲の生長量に関しては、携帯型分光放射計によるスペクトル調査を行い、NDVIの値と刈り取りによる実測値の相関について検討を行った。これらの情報から、気温・水温が稲の生長に与える影響について、水田内の分布状況を評価することが可能となった。モデル開発については、気象条件および灌漑条件から稲の季節ごとの生育状況を計算できるモデルを構築し、観測データとの比較を行った。次年度は、水田の地形的な立地条件の違いを表現するため、地下水位との連動を表現するモデルに改良を行う。
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