2011年度の研究成果は下記(1)~(3)である。 (1)地域社会システムの実態分析・評価のあり方について検討した。本年度は新たに大潟村八郎潟干拓地と長野県富士見町の自治組織.農家・非農家の社会関係を分析対象として加え、各事例の地域システムを定性的・定量的に双方の側面から分析した。昨年度はデータ不足で行なえなかったネットワーク分析について、UCONET[6]を用いて各主体間の社会関係の定量的分析を行なった。このネットワーク分析の結果と昨年度から実施していたヒアリング調査による社会関係の形成プロセスと実態の結果を、相違性、類似性、及び補完性の側面から比較した上で統合化し成果と問題点を明らかにした。その上で、具体性と客観性の双方を兼ね備えた地域社会システムの分析・評価手法の構築を検討した。 (2)地域社会システムの将来予測のあり方について検討した。前年度の成果(外来者主導型地域社会ステムの形成プロセスの分析)を基にゲーム理論、マルチエージェントシミュレーション、GISを援用し、システムの形成プロセスの考察、及び今後システムがどのように変容していくかを将来予測した。また、シミュレーション結果の検証として、各対象地で関係主体を交えた座談会を開催し、評価結果に対する各主体の"思い"や"意見"をKJ法により分析し構造的に整理した。以上の結果から、地域社会システムの将来予測手法の構築を検討するための基礎的知見を得ることができた。 (3)上述の2つの方法論の検討とともに、1・2年目の調査・分析から得られた具体的な知見を体系的に整理し、計画論的視点から「農山村地域の自立的発展の基盤を支える地域社会システムの構築」に敷術できる論理と手法(実態評価、将来予測)を提示し、最終的な本研究の成果とした。
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