研究概要 |
本研究は,乾燥地の表面流出水捕集技術であるウォーターハーベスティングの地域環境条件に応じた最適設計を可能とするため,表面流出量と土壌面蒸発速度を高精度で予測可能な2次元土壌水分挙動モデルの開発を行うことを目的としている. 平成22年度は,圃場データの収集と既存モデルの数値計算を中心に研究を進めた.中国黄土高原・陜西省神木県六道溝流域での圃場調査を,現地の雨季前後である5月と10月の計2回実施した。5月の調査では,ウォーターハーベスティングシステム(魚鱗坑)の地中に設置されている土壌水分・温度センサ等の各種測器からデータを回収し,保守管理を行った.10月の調査では,土壌浸透性等を実施後,調査サイトから全ての機器を回収した.水分モニタリングの精度向上のため,回収したセンサの個別校正試験を実施した.また,室内実験結果を元にセンサの温度依存性校正式を作成した。中国以外では,ヨルダン科学技術大学マジェッド教授の協力の下,2009年12月よりヨルダンにおけるウォーターハーベスティングの圃場実験が実施されている.これらのデータは,本研究の主目的であるモデル開発の精度検証のための最も重要な基礎データとして用いられる. これまでの圃場実験の結果を元に,既存の水溶質移動計算モデルであるHydrus2D/3Dを用いたウォーターハーベスティングのモデル化を行った.通常型のウォーターハーベスティングでは,比較的良好な計算結果が得られているが,降雨強度が高い場合や,計算領域内に蒸発抑制のための砂利マルチ等が存在すると,計算が不安定化・停止した.今後とも継続して既存モデルでのモデル化を進めると同時に,得られた結果や問題点を新規モデルの開発に反映させる.
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