研究概要 |
本研究の目的は,水田水域を主な生息場とするカエル類を対象として生息状況と自然的・人為的な環境因子(地形,農業農村整備事業の内容,工数等)との関係を明らかにすること,そして生息ポテンシャル予測や個体群存続性の評価から農業農村整備事業における生態系配慮シナリオに対するカエル個体群への影響を算定することである。本年度の主な成果は以下の2つである。 1.カエル類の生息状況と環境因子の把握:茨城県土浦市新治地区の34地点においてトウキョウダルマガエル及びシュレーゲルアオガエルの生息状況を調査した。前年度(2009年度)に作成した両種の生息ポテンシャルモデル(調査地周辺の生息環境や基盤地図情報等の地図データからカエルの生息可能性を評価する数理モデル)による評価値と,実際の生息量を比較し,ポテンシャルモデルの精度を確認した。 2.カエル類の生息環境を把握するための低コスト・簡易な調査手法を検討した。農業水路などの水位変動とカエル類の生息量との関連を調べることを想定して,低コストな水位ロガーを試作した。屋内・屋外実験により試作した水位ロガーの測定精度を検証したところ,屋内実験では0.7cm以下の誤差で,屋外実験でも大気圧および温度の補正により0.9cm以下の誤差で水位測定が可能であることが明らかとなった。また,農業水路の横断測量を簡易に行うことができる手法として,デジタル写真測量による手法を検討した。この手法は,現地で撮影した数十枚の写真をもとに,複数枚の写真に写る物体の位置座標を自動的に計算・表示させるものであり,現地での作業時間を短縮できると考えられた。デジタル写真測量により,コンクリート製の農業水路からのカエル類の脱出可否に大きく関係する水路壁面の凹凸を,簡易に計測できることが確認された。
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