研究概要 |
園芸施設内の作物に未利用部分の日射を利用して太陽光発電を行い、得られた電力で園芸施設の環境制御装置を運転し、結果として作物の収量や品質を向上させる。太陽電池製造時に排出するCO_2を作物が吸収するCO_2で相殺し、発電電力および作物の売り上げで太陽電池導入コストを数年かけて回収する。このような栽培調和型太陽光発電システムの開発を全体構想としている。今年度は、これまでの2年間で得られた実験データおよびシミュレーションプログラムを用いて、太陽電池アレイ面積および形状-発電エネルギー-施設内受光量-作物の生育の関係を解析し、園芸施設屋根面を利用した栽培調和型太陽光発電システムの総合的な特性を明らかにすることを目的とした。直線状および格子状に太陽電池アレイ(いずれもハウス土地面積に占める割合は11%)を設置した東西棟(間口5.4m、奥行16.0m、高さ3.3m)内および隣接の同型対照ハウス(太陽電池無設置)内で同時に水耕栽培したネギの生育データ(生体重,乾物重)を比較した。これまでに作成したシミュレーションプログラムによってネギの植栽位置毎に受光量を計算し、生育と受光量の関係を評価した。計算の時間精度は1分、位置精度は1cmとした。過去2年間の研究データから、ハウス内の日射受光量の時間および空間分布は太陽電池アレイの幾何学配置(直線状または格子状)で大きく異なることがわかっていた。したがって、太陽電池アレイの幾何学配置の違いは作物の生育にも大きな違いを生じさせると考えられ、このことをネギの栽培データと目射計算結果から実証した。最後に、太陽電池アレイ面積および形状-発電エネルギー-施設内受光量-作物の生育-コストの関係を解析し、園芸施設屋根面を利用した栽培調和型太陽光発電システムの総合的な特性を明らかにした。研究で得られた成果を、関連国際学会ならびに学術雑誌で発表した。
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