研究概要 |
本研究の目的は,諌早湾干拓大規模環境保全型農地における大型作業機械による土壌踏圧の現状把握とそのメカニズムの解明を行うことにある.本課題を具体的に進めていくため,トラクタとロータリ耕うん機から構成される実際の作業機械を用いた土壌踏圧試験と土壌踏圧現象の解析に対応し得る弾塑性有限要素解析プログラムのプロトタイプ開発とこれによる数値シミュレーションの実施とその妥当性の検討を行った. まず,長崎県が所有する同干拓内の圃場において,作業機械の繰返し走行回数,土壌の水分条件等を変えた土壌踏圧試験を行った.その結果,(1)耕うん直後にトラクタを繰返し走行させた場合,走行前に耕うんして膨軟にされた表層部土壌のほぼ全域が初回走行時に踏圧されること,(2)その後の繰返し走行によって,踏圧領域が徐々に鉛直下層域に拡大していくこと,(3)降雨後の土壌水分が高い状態での走行は,耕盤層以下の土壌変形を生じさせ,同層内の水圧の散逸や乾燥により土壌剛性が増大するため,耕盤形成を加速させる可能性があることを指摘した. 他方,密度の異なる土の変形挙動を同一の材料定数を用いて定量的に予測し得る上/下負荷面モデル(Asaoka et al., Soils & Found, 40(2), 99-110, 2000)に,Hashiguchi and Mase(Int.J.Plast., 1939-1956, 2007)による耐負圧面の概念を導入して,土壌の粘着力効果を考慮した新たなモデルを開発するとともに,これを導入した弾塑性有限要素解析プログラム(プロトタイプ)を用いて、繰返し走行に伴う耕盤層の形成過程ならびに耕盤を有する土壌の変形挙動の解析を行った.その結果,繰返し負荷回数の増加にともなって土壌踏圧領域が徐々に拡大していく実際現象を定性的に予測し得ることを示した.さらに,耕盤層を有する土壌において,その剛性と厚さが土壌踏圧に与える影響についても同プログラムによる数値シミュレーションにより検討した.
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