研究概要 |
本年度は,温度条件と塩ストレスの相互作用がトマト果実の抗酸化成分および抗酸化システムに与える影響およびストレスの影響を検出するためのストレス指標の検討を行った. まず,温度条件として供試植物を25℃,30℃下で栽培しそれらに塩ストレスを付与した.その結果,植物がストレスにさらされたときに上昇することが知られている脂質過酸化物含量は,25℃下より30℃下の果実において影響が強く生じ,温度条件と塩ストレスの相互作用が明らかになった。今後,これらの相互作用の生じたメカニズムを解明するために果実の抗酸化システムの測定を行う予定である. また,ストレスの影響を検出するためのストレス指標の検討として,さまざま温度ストレスおよび塩ストレス下の葉および果実においてクロロフィル蛍光誘導期現象を測定した.その結果,葉と果実およびストレスの種類によって,ストレスに対するクロロフィル蛍光誘導期現象の反応が異なること,クロロフィル蛍光誘導期現象からさまざまなパラメーターを算出することによって明確にストレスの影響が区別できることが明らかになった. これらのことから,昨年度までに明らかにした光と塩ストレスの相互作用に関する知見に加え,温度条件と塩ストレスとの相互作用も,トマトの抗酸化成分増加を達成するための複合的環境ストレスにおいて重要であることが明らかになった.今後は,これまでに得られた知見と本年度得られた知見を組み合わせトマトの抗酸化成分増加を達成するための複合的環境ストレス下でのストレス付与法,栽培法およびそのメカニズムについて解明する予定である
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