我が国における主要な園芸作物の一つであるイチゴについて、輸送中の衝撃による果実の損傷を防止するための新たな緩衝包装設計理論を構築するための基礎的知見を得ることを目的とし、衝撃加速度および衝撃繰り返し回数が果実の損傷発生に及ぼす影響を調査した。包装形態はソフトパックとし、数段階の高さからの落下を繰り返し、1パック中75%の果実に損傷がみられた際に商品性が喪失したと仮定し、試験を行った。その結果、衝撃加速度と果実の商品性が喪失するまでの衝撃繰り返し回数との関係は、高い相関を持つ累乗近似曲線により表すことができ、衝撃の繰り返しによる損傷発生モデルと一致した。この曲線を用いることにより、任意の衝撃が任意の回数発生した際の果実における損傷度を算出することが可能となることから、実輸送中に発生する衝撃の積算による果実の損傷発生程度を予測できる可能性が示唆された。また、各種緩衝材の緩衝特性、すなわち衝撃減衰程度を予め把握しておくことにより、各輸送条件下における商品性の維持に必要な緩衝材の種類や量を提示できるものと考えられた。さらに、果実硬度の異なるサンプルを用意し、衝撃による損傷性の違いに及ぼす果実硬度の影響についても併せて検討した、その結果、果実硬度計の指示値において約O.1kg硬度が低下した場合、各衝撃加速度に対する損傷性は20~30%増加する可能性が示唆された。このように、イチゴにおいて果実硬度の違いが耐衝撃性に及ぼす影響について調査した例は少なく、本結果は硬度の違いの要因となる品種や収穫時期を考慮した損傷発生予測および緩衝包装設計につながるものと考えられた。
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